3.メトセライズデストラクタに見る制作フロー

3.1この章の概要

この章では、メトセライズデストラクタの開発開始から開発終了までの流れを時系列順に追いながら、ゲーム制作の流れを解説します。

ちなみに開発スタッフは次の4人です。

 

Kazuki@Abars:ディレクション、企画、プログラミング

T2@Abars:企画、グラフィック

ゆうねこ:BGM

斬焔:効果音

ゆいこ:歌

 

T2@Abarsとの連絡は全てMSNメッセンジャーで、

ゆうねこさん、斬焔さん、ゆいこさんとの連絡はメールとメーリングリストで行いました。

 

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3.2初期衝動

個人がゲーム制作を開始する場合には、何かしら、ゲームを作りたいと思わせる動機があります。

メトセライズデストラクタの場合、それはGoogle SudjestGoogle Mapでした。

ブラウザ上でインタラクティブなコンテンツが動くという衝撃は大きく、

これを使えばブラウザ上でゲームが作れるのではと思いました。

作れると思ったら作ってみたくなるのが人情です。

20051119日、BLOGへの投稿と共に開発がスタートしました。

 

唐突にAJAXMMO作りたくねー?っと思って開発をスタートしてみた。言語はJavaScriptで、ブラウザだけで動作。というか完成するのかさえ謎なんですが、遊びがてらがんばってみます。とりあえず、アクティブなチャットで。戦闘とかはしんどそうなので、今後どうするかはチャット作ってから。サーバサイドはCGIでまかなっちゃう予定なんで、同時プレイ人数はとりあえず128で。

 

添付した画像はJavaScriptでキャラクターが動けるだけのサンプルです。

技術的にどれくらいの絵が出せるのか、どのくらいの速度で動けるのかのテストでした。

 

一般の企業では、まず始めに企画書があります。

ゲームの概要/世界観/スケジュール/スタッフ/予算、これらを文章でまとめます。

しかしエイバースの場合はとりあえず考える前にプロトタイプを作ってしまいます。

そうしてシステムがある程度固まってから、世界観を決めていきます。

 

最初はとにかく衝動で思いつくままにシステムを構築してしまう。

絵も適当、音も無い、だけど動くものが正義、それがエイバースの作り方です。

ここまではKazuki@Abarsが一人で担当します。

 

3.3企画(ゲーム概要と世界設定)

初期衝動で作ったものがある程度まとまり、これは面白くなりそうだと判断できたら、具体的な企画を考えます。

エイバースの場合は、ゲーム概要と世界設定をKazuki@Abarsが考えて、T2@Abarsに見せて意見をもらい、

ブラッシュアップして完成させます。

次に示すのが、決定したゲーム概要と世界設定です。平行してシナリオも書き始めます。

 

「メトセライズデストラクタ概要」

ブラウザで遊べる事を前提としたMMO RPGです。

完全なアクションRPGで、スキルシステムで成長します。

 

「世界設定」

年代は中世、バロックです。

イメージとしては、現在の文明が崩壊した後に始まった新たな中世。

そのため、服飾等は未来的なデザインになっています。

 

この世界には、”魔術院”と”操魔教団”が存在します。

魔術院は純粋な魔術を、教団は魔物を操る事を生業にしています。

この二つは対立しているのですが、魔術院が優勢です。

主人公は、魔術院側の優秀な魔術師となります。

 

教団は、その劣勢から封印されし”ノア”の復活を試みます。

プレイヤーの目的は、封印の解除を阻止することです。

 

タイトルの”メトセライズデストラクタ”は、”不老不死に対抗する秘術”です。

ノアは、不老不死の禁術によってヴァンパイアになった魔物ですので、

その対抗策として、

”メトセライズ”<不老不死化>の”デストラクタ”<終端>が必要になります。

3.4企画(キャラクター)

ゲーム概要と世界設定、序盤のシナリオがまとまった後、

キャラクターデザインを行います。

具体的には、Kazuki@Abarsがキャラクター設定を考え、

T2@Abarsにラフを描いてもらいます。

次に示すのがキャラクター設定です。

 

[魔術院勢力]

主人公:プレイヤーです。ドレス。

法王:魔術院の最高権力者です。

マゴイ:永久封印指定された三権者です。

 

[教団勢力]

セクレ:魔術院に恋人を殺された恨みからノア復活を指揮します。

カイル:ミスレと行動しています。後で仲間になります。失われた力を求めています。

ミスレ:カイルの仲間です。

 

[デザイン]

ファンタジーだけど未来的なデザイン。

教団は自由なドレスコード。ビビットな色。

魔術院は保守的な感じ。

 

キャラクターデザインでは、各キャラクターを描いてもらっては議論し、また描いてもらう、という作業を繰り返します。

主人公以外は大体二回ぐらいでまとまります。

一番手ごわいのは主人公で、メトセラの場合、5回ぐらいの議論の末にようやく完成しました。

ゲームの魅力のかなりの部分が主人公のデザインによって決まってしまうので大変です。

ですので、デザインはまず主人公以外から固めていきます。

次に示すのが、決定したデザインです。

 

左上:セクレ 右上:カイル 左下:ミスレ 右下:主人公

 

メインキャラクター以外のサブキャラクターについては、

ゲームを制作しながら随時発注します。

仕事は一気にやらず、バランスよく配分するのが、飽きないコツです。

 

3.5企画(ステージ構成)

キャラクターがまとまった後、ステージ構成を考えます。

ステージの数はできるだけ少なめがいいと思います。

ゴールが見えない制作は辛いので、一度小さく作ってから、後で拡張するのが挫折しないコツです。

次に示すのが具体的なステージ構成です。

 

魔術院:魔術院の総本山です。街として機能します。

アールドの遺跡:ノアを封印する魔石の存在する遺跡です。

幻妖の森:ノアを封印する魔石の存在する森です。

水上神殿ヘブンズゲート:ノアを封印する氷の洞窟です。

蜃気楼の塔:魔術院の切り札のある塔です。

雨降りの渓谷カムラン:ノアとの最終決戦の場所です。

 

3.6グラフィック工数の見積もり

次に、必要なグラフィックの種類を見積もります。

メトセライズデストラクタでは次のような見積もりを行いました。

 

プレイヤー:立ち、走り、攻撃1、座り、攻撃2、魔法(1モーション4枚)

壁:各ステージ1

敵:各ステージ3体のザコ、1体のボス(立ち優先、アニメは後で)

  合計20

街:3体の人

イベント:必要に応じて随時

 

ポイントは、優先順位を付けることです。

このリストは、作業の優先順位で並んでいます。

プレイヤーについては、座りのグラフィックや、魔法のモーション等は、最悪無くてもゲームとして成立します。

また、敵も、攻撃アニメーションが無くてもゲームとして成立します。

しかし、プレイヤーの立ちグラフィックや、敵の立ちグラフィックが無ければ、ゲームとして成立しません。

時間と予算は限られていますので、優先順位は厳格に設定します。

 

また、全体の作業としても、細部のクオリティは落とします。

まずは全体が完成することを目指し、細部は最後にブラッシュアップします。

例えばプレイヤーの立ちをものすごい時間をかけて素晴らしいドットにしてしまうと、

残りの絵も全てそのクオリティで制作しなければならなくなります。

ゲーム制作のモチベーションは時間とともに低下してしまいます。

最初のやる気はできるだけ全体に分散させるべきなのです。

 

走りドット

 

3.7繰り返しの日々

ここからしばらくは素材を作ってはゲームに入れ、作ってはゲームに入れの繰り返しになります。

スケジュールはできるだけ細かく設定します。

 

具体的に、何月何日までにプレイヤーの立ちを仕上げる、

何月何日までにステージ1のマップを仕上げる、等、

やるべきことをリスト化しておきます。

後は黙々とそのリストを消化していくだけです。

 

このリストが無ければ、絵を待っている、だとか、マップを待っている、だとか、

今やることが無いから、というような言い訳ができてしまいます。

作業は始めたら楽しいのですが、始めるまでが大変です。

ですので、まずリストを作っておいて、必ず一日一つは消化する、としてしまうことで脅迫するのです。

一日一歩進めば、必ずいつかは完成する。

それが心の拠り所です。

 

ちなみに各人の作業を次に示します。

これも優先順位順に並んでいます。

ステージ1だけ優先するのがコツです。

ゲームとして少し遊べるものが先に出来るので、モチベーションアップができます。

 

Kazuki@Abars

おおまかなシステムのプログラミング

ステージ1のマップを作る

ステージ1の敵を作る

アイテムを少し作る

ステージ1まで遊べるものが完成!!

シナリオを随時書く

ステージ2から5まで順番に作っていく

アイテムをいっぱい作る

ブラッシュアップ

デバッグ

 

T2@Abars

プレイヤードットの完成

ステージ1の敵の完成

ステージ1の壁の完成

インタフェースのドットの完成

ステージ1まで遊べるものが完成!!

ステージ25のドットの完成

魔法グラフィック

アイテムグラフィック

ブラッシュアップ

 

3.8情報公開

ステージ1まで出来て、はじめて体験版とWEBでの情報公開を行います。

 

ちなみに情報公開は体験版と完成の二回だけです。

というのも、情報を出すと情報を出しただけでやり終えた気持ちになってしまいます。

随時BLOGで情報を公開しているゲームが世に出る事は稀でしょう。

このゲームを公開するとみんな驚くぞ…ふふふ、というのが、繰り返しの日々の数少ないモチベーションだからです。

 

だからといって完成時だけの情報公開だと、

ゲームを客観的に見ることが出来ないため、

全体のクオリティが保障できなくなります。

 

そこで、大体二回というのが妥当な所だと考えています。

 

3.9ゲーム全体を通して遊べるものの制作

体験版公開後は、ユーザからの声も聞きながら、

全体をおおまかに遊べるものを作っていきます。

細部よりも全体に拘って制作していきます。

3.10音素材の発注

ゲームとして70%程度完成してから、はじめて音を発注します。

これは、エイバースでは音は外部の人にお願いするためです。

 

ゲーム制作に参加するかしないかの判断には、

そのゲームが本当に完成しそうかどうかが重要になります。

そこで、ある程度形になったものを見せて交渉するのです。

 

音を発注する場合は、まず、いい音楽を作ってくれそうな人を探します。

探す場所としてはMUZIE(http://www.muzie.co.jp/)がオススメです。

 

いい音楽を作ってくれそうな人が見つかった場合は、メールで参加を依頼してみます。

世の中当たって砕けろということで、勇気を出して頑張ります。

その際、おおまかな素材の内容と予算を明記しておくといいと思います。

次に示すのが、メトセライズデストラクタの発注内容です。

 

曲目合計11曲(もしかしたら2曲程度増えるかもしれません)

 タイトル 30

 オープニング 一分

 街 1分三十

 1.遺跡 1分三十

 2.森 1分三十

 3.水上神殿 1分三十

 4.塔 1分三十

 5.ラストダンジョン 1分三十

 ボス 一分

 ラスボス 一分

 エンディング 一分

FLASHに組み込むため、合計6MByte以内

13分 mp3 モノラル 56kBpsでそんな所)

 

ちなみにメトセライズデストラクタでは、

BGMをゆうねこさん、効果音は斬焔さんにお願いしました。

 

一般的にはBGMと効果音を一緒に担当する場合が多いです。

効果音専門の人というのはかなり少ないのがその要因です。

斬焔さんは、TECHWin誌でATULADOを一緒に連載した縁でお願いしました。

 

歌をお願いする場合も同じような内容です。

とにかく一緒に仕事をしてみたい人が見つかったらメールしてみるだけです。

歌の場合は出来ればスタジオが借りられるといいですね。

3.11細部のクオリティアップとデバッグ

音が揃ってきたら後は細部のクオリティアップです。

時間の許す限り素材をアップデートしていきます。

 

また、時間の許す限り繰り返しプレイして、バグを潰していきます。

また、ゲームバランスの調整も随時行っていきます。

 

これらは、ゲーム制作の最後にもやるのですが、

ゲーム制作の初期段階でも重要です。

時間が出来たら常に遊んでみる。

ゲームのクオリティは、遊んだ回数で決まると思います。

 

3.12リリース

遂に完成とリリースです。

制作期間二年半、ドットグラフィック350枚、ソースコード511KB

シナリオ42KB、マップ166KB、アイテム30KBBGM19曲、効果音110種類。

 

終わるときは終わるものです。

そして心に空いた隙間を埋めに、また走り出すのです。

 

3.13この章のオススメ書籍

制作は情熱が命。情熱の補給には東京トイボックス!

 

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